金美廷
大学院書類:研究計画書
1.志望理由: 夢としての留学
私は韓国の南の島、済州で生まれ育ち、今もそこで生活しています。日本には主人の仕事で何回も来ました。2006年には半年間、2013年には一年間、創価大学に研究滞在した主人と共にゲストハウスで過ごす機会を頂きました。その時、図書館や学生向けの施設、キャンパス内の豊かな自然や庭園などを見ながら、創価大学は学生に対する配慮が大変に行き届いた大学であることを実感しました。そしていつかの日か、今度は学生としてこの大学で学びたいとの思いを強くしました。
海外に留学することは私の幼い頃からの夢でした。しかし、それは叶わぬ夢だとも思ってきました。20代の頃に一度はあきらめた夢ですが、日本を訪問するたびに留学生になりたかった夢が顔を出します。3年後には60代を迎える年齢になって、今から勉強し直すことは無理だとも言い聞かせました。しかし、 私の心の奥底にはいつか自分の夢を実現させたいという声が消えることはありませんでした。
今春、息子が結婚して家を出たことで、私は30年間の子育てを終えました。来年2月には主人が定年退職を迎えます。学者である主人のため、私はこれまで研究助手のような立場で協力してきました。息子にもやがて子供ができるでしょう。私にとって、孫の世話をするようになるまでのわずかな時間かもしれませんが、来年からの2年間を自分の夢を実現するために使いたいと思い直しました。私の人生にとって、留学のチャンスは今しかありません。創価大学大学院への留学は私の人生の贅沢であり、幸せです。自分への最高の贈り物になるでしょう。
2.研究題目:済州島の相互扶助の関係について
私が大学院で学びたい事は<相互扶助の関係>です。人々の生活で大事な儀式として冠婚葬祭が挙げられます。その時、人々は色々な形で協力します。世界のどの地域でもそうであり、昔から現在まで人間の集団には重要な儀式における相互扶助の関係がありました。私は人々の間で行われる協力、支援、応援に関心があります。
済州島は韓国の中でも特別な地域で、韓国本土とは異なる点が沢山あります。本土と距離があることで歴史や文化、言葉や生き方が違うと言われます。済州島の冠婚葬祭の様式も本土とは大きく違いました。しかし、近代化と産業化に従って社会変化が起きました。現在では済州島と韓国本土の生き方や文化の違いはかつてほどではなくなりました。それは冠婚葬祭についても同じで、現在の済州島と本土とはほぼ同じ形式になりました。しかし、済州島民の相互扶助の関係性だけは本土との違いが生き続けています。そこで、私はその特徴に焦点を置き、<韓国の済州島の相互扶助>をテーマに修士論文を書きたいと考えています。
3.研究目的:表現方法を身に付ける
冠婚葬祭については物心ついてから今まで沢山の儀式・儀礼を見てきましたが、これまで当たり前だと思ってきた形態が大きく変化してきた事に気づきました。自分が生まれ育った済州島で約50年間に渡って儀礼の変化を見てきたはずなのに、いつ頃から何がどう変化したのかについて具体的かつ論理的に説明できないことに驚いています。
そこで私は大学院の期間に社会調査の方法や先行研究について学び、説明力を身に付けたいと思います。その学問分野が社会学になるのか人類学になるのかは指導教官のアドバイスを受けて決めたいと考えています。
そして学問的な視点から済州島の相互扶助の関係について論理的に説明したいと思います。他の社会の現状とも比較するとともに、説得力を持って分析できる力を身につけたいと考えています。
4.研究計画:済州島での聞き取り調査を中心に
済州島における相互扶助の関係を調べるため、済州島を調査フィールドとします。
学期間は授業で研究の基本を学びます。また、済州研究をして来た先行研究にも目を通し、自分の研究に役立つようにします。夏休みと冬休みには現地調査のために済州島に戻り、そこに住む人々と会って聴き取り調査をします。調査内容はその都度まとめておき、それを論文の基礎資料にします。学期間は調査で作った基礎資料を基に指導教官や研究室の学生の前で発表の機会を頂きたいと思います。その時に受けたコメントを研究論文に生かします。
済州島は私にとっては慣れ親しんだ場所ですが、研究調査のフィールドとしてみると興味深い点が数多くあります。本研究は済州島出身の私にとって、これまで当たり前のことと見なしてきたものを学問的な視点から新たに観察し直す機会になると思います。今回の留学は、私の第二の人生をスタートする上で、得難い機会になると確信しています。
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